生きていると、時としてどうでもいいものを食べたりする。
昨年の夏、近所の商店街でショボショボの祭りをやっていた。
ショボショボもいいところで、子供ですら楽しくないのでは? というレベルだった。
ケータイショップがビニールプールにうまい棒を入れて、子供に釣り竿で釣らせていた。ひどいゲームだ。
屋台も片手で数えて余る程しか無かった。
屋台と言っても、スーパーの前に並べられた長机に、どっかの家のホットプレートが乗っていたりするようなやつだ。
なんだか批判しているようだが、私はこの祭りを「悪くないな」と思ったのだった。
近所の人が作った、近所の人のための祭りである。
それぞれの家や店が、無理のない範囲でできることをしてる感じ。
子供はつまらないかもしれないが、どっかの家のホットプレートで焼きそばを焼くおじさんはちょっと楽しそうだし、優しい雰囲気の、ぬるくていい感じのショボさだった。
長机の一角で、団子を売っていた。
「団子買うか~」
全く食べたくなかったが、なんだか買わないと損な気がした。
団子を買うことで、祭りに参加したかったのかもしれない。
白い団子に、みたらしでもない、ただの醤油が塗られていた。
妙に歯切れの良い、固い団子だった。
「なんか固いね」
「どうでもいい味がする」
「どうでもいい味で、おなかがいっぱいになる」
「まあ、団子だね」
「団子だ」
「団子だ」
そして近頃暑くなり、ふとその時の話になった。
どうでもいい団子食べたよね、と。
あのちょいマズの団子のことを思い出したらなんだか笑えた。
どうでもいい団子だったが、こうして夏の思い出として翌年も語られるのだから、立派な団子である。
1年経ってから、食べてよかったと思えた。