歯医者で働いている間、嫌いなものに囲まれて過ごしている。
嫌いな音楽、嫌いな花、そして最近嫌いな絵まで追加された。
嫌いな音楽というのは、ドリカムのピアノカバー集だ。
わたしが人生で一番聞いている音楽は間違いなく歯医者で流してるドリカムのピアノカバー集。
聞きすぎのせいで、未来予想図Ⅱピアノバージョンが歯医者にいないのに突然脳内で流れることがある。
コーネリアスのライブに行くような趣味を持っていながら、脳はドリカムのピアノカバー集に支配されている。悲しい。
嫌いな花というのは、汚い胡蝶蘭なのだが、汚いというか、妖怪じみた見た目になってしまっている。
お祝いで貰ったものなのだが、一度花が終わった時点で土に還せば良いところを、園芸好きのスタッフがせっせと水をやり続け、自腹で肥料まで買ってきて世話を続けた結果、再び花が咲いた。
しかし、仮にも高級品の胡蝶蘭が、素人の世話で元の状態になることはない。
元々ついていた枝を固定するワイヤーの長さを越えて伸び続け、ビロビロのぐにゃぐにゃになった枝先に小ぶりの花が隙間をあけてぽつりぽつりと咲いている状態。
なぜか葉はほとんど枯れた。
その状態でなお肥料を与えられ続け、死にかけながらもう1年以上小さな花を咲かせ続けている。
それが休憩室にずっと置いてあって、見るたびに「殺してくれ~」と言っているようにおもえてしまう。
スタッフが育てたものなのでもう捨てましょうとは言えない。
明日もモンスター化した胡蝶蘭と食事をする。
そして本題となる嫌いな絵だが、一言で言うと「何?」である。
説明すると、"宇宙空間にあるテーブルで食事をするウサギの隣に巨大なニンジンがあり、そこから花火が噴射している絵"なのだが、こんなの「何?」としか言い様がないだろう。
まじで何なんだ。
こんな意味不明の絵は見たくない。
でも院内の通路に飾られているので毎日嫌でも目に入る。
ドリカムのピアノカバーを聞きながらクソ絵を見ていると、もはや別の芸術を生んでいる気さえしてくる。
自分の家には自分の好きなものばかりある。
オシャレなものは無いけど、好きなコップとか、好きなタオルケットとかがある。
家はいいな~って、毎日新鮮にそう感じる毎日だ。