「小銭をかぞえる」の焼きそばを探す

こんにちは。おしり元気です。

結論から言うと見つからなかったけど、新しい遊びのすすめです。

 

夢の焼きそば

西村賢太の「小銭をかぞえる」という死ぬほどほど面白い本があります。

 

梗概はアマゾンにお任せしますが、わたしは最近この人の私小説に出会って、そのことを人生の転機に感じているほどで、言葉にしてしまうと「夢中」の2文字なんですが、それだけだとなんだか違うというか、とにかく他の本に対するものとはとは別の、特別な気持ちを持っています。

この感じは銀杏ボーイズと出会った14歳のときの気分とちょっと似ている、と言えば、どんな気分かわかる人もいるかもしれません。

(初めて京極夏彦を読んだ時もその面白さにかなり脳がグラグラした感じになりましたが、銀杏ボーイズ的パッションとは種類が違いました。)

 

さて、その「小銭をかぞえる」の中で、主人公の「私」が同棲している「女」と食べた焼きそばのことを回想するシーンがあります。

いつだったか、女とは池袋のデパートに出かけた際、ついでにそこの階上の食堂街で晩飯を食べたことがあったが、そのとき何気なく入った中国料理店の五目焼きソバには、その余りのうまさに私も女も驚嘆した覚えがある。それは野菜やうずらの茹で卵の他、分厚い焼豚に芝海老、肉団子に、鶏の唐揚げまでもが載っかった豪華版で、値段もなかなかに良かったが、味付けのキレのある醤油風味が全く陶然とする程の美味で、互いに何度も顔を見合わせながら夢中で口に運んだものであった。(西村賢太「小銭をかぞえる」より抜粋)

本編ではこの焼きそばをまた食べに行こうとする所から話が超クレイジーな展開を見せるんですが、それは置いておいて、これ、すごくおいしそうですよね。

焼豚も肉団子も鶏の唐揚げも、単体で十分うれしいおかずなのに、それが全部、しかも五目焼きそばの具として入っているらしい。

こんな夢みたいな焼きそばがあるなら、絶対に食べてみたい。

とりあえず探してみることにしました。

 

 

池袋でから揚げの入った焼きそばを探せ

 

探すためのヒントはこの4つ。

1:池袋のデパートの食堂街の店

2:焼豚・肉団子・鶏の唐揚げが入っている

3:2人で3000円くらいだったとの記述あり

4:これを食べるために待ち合わせをしたのは「西武池袋線の改札前」

 

かなり具材が特殊なので、これらが入った焼きそばを見つけたらそれが正解と言っていいとおもいます。

 

まず、待ち合わせ場所が西武池袋線の改札前という所から、西武口のあたりかな?と考えました。

池袋駅周辺の食堂街を持つ大きなビルといえば、大まかに言うと

東側→西武・パルコ

西側→東武・ルミネ

の4つですが、東側にある西武口から向かうとして、一番自然で、かつ「デパート」という呼び方にふさわしいのは西武です。

理論的に導き出した結論になんだか確信めいたものを感じつつ、西武に行ってみました。

 

西武には有名店がある

 

案内板を見てみると、池袋西武の食堂街に中国料理店はかの有名な「銀座アスター」、そして「狗不里(ゴウブリ)」の2つ。

まずは銀座アスターへ行ってみました。

こんな有名店の焼きそばのことでしたって言われたらなんだかガッカリだな~とおもいつつ、メニューを確認します。

 

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レモンが添えてある心遣いがさすが有名店という感じですが、それっぽいものはなし。

 

次に狗不里(ゴウブリ)。

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 ここは今風のおしゃれっぽいお店で、食品サンプルがありましたが、やっぱり唐揚げは載っていません。ホタテが載ってるのは魅力的ですが。

 

有力だとおもっていた西武説が早々に否定されてしまったので、同じく東側のパルコにも行ってみます。

西村賢太がパルコに行くところは全く想像つきませんが、女連れなら行くでしょう。

 

パルコは若い女性向け

 

パルコには中国料理店が1つしかなく、しかも「小籠包カフェ」でした。

明らかに若い女性をターゲットにした店構えに、「ここに来るわけがない」ということはすぐに分かりましたが、一応チェックします。

 

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繊細な人参の飾り切りがステキですが、これも違います。

「2人で3000円」の金額的にはいい線をいっているんですけどね。

 

焼きそば探しを再考察

 

というわけで、冒頭で言った通り、池袋の東側にあの焼きそばはありませんでした。

調べてみると、池袋西武は2011年にレストラン街を改装しているんですね。

messe.nikkei.co.jp

ということは、そのお店自体もう存在しないという可能性も結構大きいです。

それに、私小説とはいえ、すべて本当のことが書いてあるわけではないので、待ち合わせは西側だったかもしれないし、そもそも池袋ではなかったかもしれません。

 

わたしは、これが西村賢太の「ぼくのかんがえたさいきょうのやきそば」で、ただの願望、架空の焼きそばのことを書いているんだったら最高だなとおもいました。

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日常の中のちいさな冒険

 

焼きそばを探しに行くのはとっても楽しくて、ちょっとした冒険気分でした。

ただ池袋に遊びに行って食堂街をぶらついてもしょうがないけれど、ちょっとした目的が生まれると冒険になります。

「本当に見つかるかもしれない」という期待と、「本当に見つかったらどうしよう」というドキドキ。

たまにはこんな遊びはどうでしょうか。

 

今度は東武の方も見に行ってみようとおもいます。

あきたりない結果でしたらすみません!