団子屋キラキラストーリー

柏餅を買いに出かけた。

柏餅と冷たい緑茶でおやつにしたらさぞ楽しかろうとひらめいたのだ。

 

団子屋には数人の客が並んでいた。

今日はこどもの日だ。

わたしはソーシャルディスタンスを守りながら、列の最後尾に立った。

 

列が進み、店に近づいてくると、ショーケースの中に菓子が殆ど残っていないことが分かってくる。

数本の団子と、数個のおはぎ。

肝心の柏餅は、3個入りのパックが3個だけ。

ギリギリ買えそうではあるな、と思ったその時だった。

 

先頭にいる50代くらいの女性客が、菓子類が残っていないことに怒り始めたのだ。

 

商品名が書かれた札を指差して

「これはないの!?」

と語気強めで聞き、店のおばあさんにそっけなく「無い」と言われるというのを何度も繰り返している。

 

「これは!?」

「無い」

「これも!?」

「無い」

「こっちは!?」

「無い」

「この下の段のも全部無い訳!?」

「……」

 

おばあさんはフイと意味もなく店内を振り返り、聞こえていないふりをした。

とうとう女を無視するという戦法に出たのだ。

 

スゲー、と思った瞬間。

女が目を半開きにして、口元をひんまげて、両手を胸のあたりでクルクルする仕草をしてみせた。

 

されたことない人はわからないかもしれないけれど

「こいつは話も聞いてないバカで〜す」

「お話になりましぇ〜ん」

みたいなことを、言葉にせず、顔と動きで表現しているのだ。

 

スゲー。

このやり方って、ある程度年齢の高い人がやるものだと思う。

私もすごく久しぶりに見た。

誰がやり始めたのか知らないが、すごく嫌なものだから今後二度と、誰もやらない方が良い。

 

女はそれをやってスッキリしたのか、さっさとどこかへ行ってしまった。

おばあさんも何事も無かったように、次の客に柏餅を売る。

 

なぜだか関係の無い私が心にダメージをくらっており、怒りのような、悲しみのような、なんとも言えずイライラとした感情を抱え、列から離脱した。

柏餅なんてもう食べたくなかった。

 

団子屋キラキラストーリー☆★☆彡

END(*˘︶˘*).。.:*♡