週刊ゆふあや お祝い膳

水曜日

退院の前日の夕飯は豪華な「お祝い膳」だったという話を複数の経産婦から聞いたので、ワクワクしながら待っていたが、焼き鮭、卵焼き、おひたし、ふかした里芋だった。勝手に期待していたほうが悪い。健康第一だね。

赤ちゃんの沐浴の練習をした。服を脱がした時は寒くてびっくりしたのか両手を上げて泣いてたけど、足からそっとお湯につけると、目を閉じてすごく気持ちよさそうな顔をしていた。お風呂好きそうで良かった。2500g以下の小柄な体ながら、ミルクも50ml飲めるようになり、母乳も頑張って吸っている。うまく飲めなくてキレ泣きしながらも必死で吸っている所が本当に可愛い。

 

木曜日

朝から大雪。そして退院。私だけが。

赤ちゃんは退院するにはまだ体重が足りないとの事だ。とても寂しいけれど、病院でちゃんと管理してもらえる方が安心なので、おまかせする事にした。外はすっごく寒いしね。

入院生活は、決まった時間に栄養満点の食事が出てきて、掃除もしてくれて、サポート体勢も万全で、とても快適だったけれど、一日中かなり頻繁に人が入ってくるので、気は休まらなかった。おちおち昼寝もできないし、少し疲れてきていた所だったから、家に帰れてすごく嬉しかった。自分のベッドはフカフカしていて寝心地が良くて、夫が洗っておいてくれたシーツも気持ちよく、入ったらすぐに眠ってしまった。

夜は寿司を食べた。雪の中、夫が買ってきてくれたのだ。夢にまで見た寿司。妊娠中に生魚を食べるのは良くないと聞いて、ずっと我慢していた寿司。若干涙腺が刺激されるほどうまかった。

妊婦生活を振り返ると、とにかく体が辛いことばかりで、約1年間ひたすら耐えて、耐えて、最後は流れに身を任せるしかなかったという印象だ。身体的には苦しい日々だったけれど、近くて遠い赤ちゃんの存在は、まだ顔を見たこともないのにとても愛おしくて。また、そんな風に思う自分が不思議で、面白い日々でもあった。

赤ちゃんの人生は、今始まった所だ。そう思うとなんか凄すぎて言葉が出ないが、彼女の人生が良いものになるように、サポートできたらいいなと思う。

 

金曜日

赤ちゃんの授乳のため病院へ。家で搾乳、冷凍した母乳も持っていく。連れてこられた赤ちゃんは、またキレ泣きしながら10分間乳首を吸った。授乳前後で体重を測って、どれくらい飲んだかをチェックするのだが、「3ml飲んでますね」と言われてベッドからずっこけそうになる。少ね〜!!

小児科の先生によると、体重以外に気になる所見は無く、とても元気らしい。こまめに体重チェックに来てもらう必要はあるが、退院も可能との事だった。もう少し長引くかと思ったが、急遽明日退院することになったので、慌てて夫と焼肉屋にランチを食べに行く。もう気軽に焼肉ランチとかできなくなると思うと、つい。

 

土曜日

赤ちゃんを迎えに行く。病院を出る前にまた授乳。今日はなかなか上手に吸えている。昨日と同じように前後で体重測定をしてみると、14mlも飲めていた。すごいすごい!成長してるね!と助産師が赤ちゃんを褒めてくれた。退院のために用意した真っ白のセレモニードレスを着せたら、その瞬間に吐き戻してウケた。

という訳で、いよいよ、赤ちゃんのいる生活が始まった。家の中で赤ちゃんが泣く。でも、まだ現実感が無い。本当にこの家の中の出来事なのか!?とか思ってしまう。3時間おきの授乳。授乳後すんなり眠ることもあれば、ちっとも寝ないでグズグズしていることもある。グズグズ赤ちゃんをあやしてやっと寝たと思ったら、もう1時間後には次の授乳の時間じゃん!なんて事もあって、初日から夫婦でゲッソリしてしまった。でも、なにしろ可愛いので、ゲッソリしながら「可愛いねえ」と言い合っている。

 

日曜日

初めて自宅で沐浴をさせたが、なかなかうまく行かず、赤ちゃんもずっと泣いていた。病院でやったときはそんなに難しくないなあと思ったのだが、病院のベビーバスは巨大なシンクみたいなやつで、腰に無理のない高さだったし、すぐ側に着替え専用の台もあったりして、考えてみたら自宅とはかけ離れた環境だった。要練習。

赤ちゃんが「新生児微笑」をするようになって嬉しい。本人は笑っているつもりはないらしいが、笑ったように見えるのだ。ただ、それは本当に時々で、基本的には怒ったような困ったような顔をすることが多い。寝室に連れて行く度に「ここは……どこ?」みたいな顔をする。「さっきもここ来たでしょ」と言っても、不審そうに部屋をジロジロと見ている。

 

月曜日

病院に赤ちゃんを連れて行く。こまめに体重が増えているかチェックが必要なのだそうだ。初の赤ちゃん連れ外出ということですごくドキドキしたが、赤ちゃんは道中一切泣くことなく、病院でも新生児微笑でニヤニヤしていた。

 

火曜日

赤ちゃんの保険証ができた。社会に存在を認められてしまったということだ。労働、納税、労働、納税……。本当はそんなことさせたくないが……。赤ちゃんが大人になる前に、週休3日制で十分な給与が貰える、豊かな国になりますように。